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私はメインのシンセとしてArturiaのPigmentsを愛用しています。そんなPigmentsのバージョン6では新たにModalというエンジンが追加されました。
Modalエンジンは物理モデリングという仕組みで動くエンジンで、簡単に言うとPCの中で弦やその他物体の振動をシミュレートすることで音が鳴ります。なので弦のような音や金属っぽい音を気軽に作ることができます。
このModalというエンジンは他のシンセではあまり見かけない面白い方式だと感じたので今回はModalのパラメータについて解説し、3つほど音を作ってみたいと思います。
Modalエンジンの概要/特長
Pigmentsなどシンセにはウェーブテーブル, FM, グラニュラーなど様々な音声合成方式があります。Modalとそれらとの違いについて触れておきましょう。
まず、Modalエンジンは他の方式よりも生っぽい有機的な音を圧倒的に簡単に作ることができます。他の合成方式ではある程度手を加えてやらないと、どうしても機械的でシンセっぽい音色になりがちです。
PigmentsのModalエンジンでは周波数分布が分かりやすいグラフィックで表示されるので、どのパラメータをいじるとどのように音が変化するのか視覚的にも分かりやすくなっています。

次にModalエンジンの基本的な構成要素はExciterとResonatorです。Exciterは音を生み出す素のようなもので、Resonatorは生み出された音に対して倍音を付加するようなものです。
アコースティックギターに例えると、指やピックで弦を弾く最初の衝撃がExciterです。そして、その衝撃を受けて振動する弦と、振動を増幅・共鳴させて豊かな音色を生み出す「木製のボディ」全体がResonatorの役割を果たします。
個人的には非整数次の倍音を簡単に発生させられるのがポイントかなー思います。普通にシンセをいじっていると整数次倍音が多くなってクリーンすぎるサウンドになることが多いので簡単に有機的な感じになって良いです。
以下ではExciter, Resonatorについてそれぞれより詳しく説明していきます。
各セクション
Collision Exciter
ギターのピックが弦に当たる瞬間のようなCollision(衝突)を生み出すExciterです。アタック音を作るためのExciterです。

Collision, Transient, Audio Inputという3つのモードが用意されています。それぞれ
- Collisionモード=リアルタイムに計算して衝突を合成
- Transientモード=サンプルベース
- Audio Input=外部からのオーディオ入力を利用
という感じです。
Collisionモードはのこぎり波のような感じで倍音を多く含むので、後に出てくるResonatorで倍音分布をいじると良い感じに質感が変わります。Transientモードは様々なサンプルベースの音が含まれているので色々試してみると良いです。
Friction Exciter
バイオリンの弦が擦れるときのようなFriction(摩擦)を生み出すExciterです。持続的な音を作るためのExciterです。

こちらもFriction, Noise, Audio Input, Granularというモードが用意されていて、それぞれ
- Frictionモード=リアルタイムに計算して摩擦を合成
- Noiseモード=ノイズを用いたサンプルベース
- Audio Inputモード=外部からのオーディオ入力を利用
- Granularモード=グラニュラー
という感じです。
個人的には特にGranularモードがあまり聞いたことがない質感で面白いです。
Resonator
Exciterで発生した音に倍音を付加します。Resonatorによって音のキャラクターが決定されるイメージでしょうか。

Resonatorのパラメータをいじると倍音の構成が変わったりするので、グラフィックも参考にしながらいじると良いです。
大きくStringとBeamの2つのモードがあります。Stringは弦のような物体を、Beamは堅い物体の振動をシミュレートしています。音の印象としてはStringの方は割と倍音が豊かな感じで、Beamの方はクリーンな響きがする傾向があります。
正直ここはかなり機能が多いので自分でいじりながら試行錯誤するのが良いと思いますが、特に面白いと感じたのはTimbre, Warp, Shaperです。
Warpでは倍音の分布をごっそりシフトさせたり、形を変えたりすることができます。かなり質感が変わるのですが、パラメータをいじっても有機的な感じが保たれるのが使いやすくていいですね。また、Warpの横にあるQを無効にすると非整数次倍音が混じった音になるので、たとえば金属音のような音を作りたいときは便利です。
TimbreとShaperは正直内部で何をやっているのかよく分からないですが、キャラクタ―が結構分かりやすく変わります。とりあえず色々切り替えてみて好きなものを見つけるのがいいのかなという感じです。
音を作ってみる
では何となくイメージが掴めてきたと思うので、さっそく音を作ってみましょう。全て文章で説明するのは難しいので作り方の要点だけまとめてみました。ぜひ読みながら自分でもパラメータをいじってみてください。パラメータの値が少し変わるだけで結構テイストが変わるので面白いです。
Bell
まずは空間を感じさせるベルの音から
作り方は以下の通り

- CollisionはAttackを最速(0)に
- FrictionはVolume 0
- ResonatorはBeamに設定
- Warpを-1.45, Shapeを50%, Shaperをbrassに設定し、MorphをMax(1.00)までかける
- FXはMultibandのプリセットopp
- Out HighとAttackを上げて、Out LowとReleaseを下げるとキラッとした感じが出る
氷のような音
こんな氷っぽい質感の音も
作り方は以下の通り

- CollisionはTransienモードのlazer
- 書いててこれはいらない気がしてきた
- FrictionはGranularモードのamp
- Rateはお好み
- ResonatorはString
- DecayとBrillianceは11時くらいに抑える
- Warpを-0.4, Shapeを65%に設定、Shaperはglass
- FXはMultiband
- ここでもHighを上げてAmountを上げると氷っぽくなる
学校のチャイムの鐘のような音
懐かしいチャイムの音
作り方は以下の通り

- ResonatorをBeamモードにする
- Decayは長めに設定
- Warpの横のQを無効にするのがポイント!
- 非整数次倍音が出て鐘っぽくなる
- Warpは-1.2くらい
- FXはこれまたMultiband
ちょっとシネマティックなベース
ちょっとリッチでシネマティックなベース
作り方は以下の通り

- Collisionのみ鳴らす
- Warpを-2.00にしてShaperをbrassに設定、MorphはMax
- これで音の重心が低くなる
- FXはDistortionとMultibandをかけると音が太くなる
まとめ
生楽器っぽい有機的な音が好きなのでModalエンジン、個人的にはお気に入りです。Pigmentsはアップデートが今のところ全て無料みたいなのでそこも嬉しいですね。
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