私も含めてギターを弾かない人にとって、ギターの打ち込みは難関の1つです。リアルさを求めると複雑なキースイッチを駆使する必要があり、時間をかけてもそこまでリアルにならないということも少なくありません。
Ample Guitarシリーズはまさにそのような人のための音源です。今回レビューするSH (Semi Hollow)はセミアコ音源で独特の甘くてChillな空気感を直感的な打ち込みで出すことができます。Lo-fiやR&Bなどのジャンルとは相性抜群です。
この記事ではそのリアルなサウンドからキースイッチを意識せずに本格的なストロークやリフを打ち込む方法まで詳しく解説していきます。SHでなくAmple Guitarシリーズの他の音源が気になっている人にも参考になると思うのでぜひ最後までお付き合いください。
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音を聞いてみる
まずはいくつか音を聞いてみましょう。最初の2つは後に紹介する内蔵のシーケンサー上で自分で打ち込んだもので、残りはプリセットです。
まずは私が適当に打ち込んだもの
プリセットのパターン。このようにかなりレベルが高い演奏も打ち込めます。
ストロークパターンも聞いてみましょう。
音に雰囲気があって個人的にはかなり好きです。
以下では基本的な使い方について説明していきます。
メインパネル
音源を立ち上げるとまず表示される以下のような画面がメインパネルです。

全てを説明しているとキリがないので左から順に軽く説明します。
- 奏法
一番左で奏法を切り替えられます。各奏法にはキースイッチが用意されていますが、後に紹介するようにこれらのキースイッチを意識しなくても各奏法を駆使して打ち込むことが可能です。
- ボリューム
大まかにDIはミッド成分, Stereoはサイド成分に対応します。センターを強く出したいのか、ワイドに広げたいのかによって調節すると良いでしょう。
- DOUBLE
名前の通りダブリングのオンオフとどれくらいダブリングで音を広げるかを設定できます。
- ノイズとリリースサウンド
ノイズやノート離したときのリリース音の調整ができます。細かいニュアンスを表現する際はここをいじると良いでしょう。
- その他細かい設定
1つの弦で異なる音を同時に発音できるようにするか(本物のギターだとできない)、開放弦を優先するかどうかなど演奏するときの細かいモードを設定できます。ここはあまり意識しなくても大丈夫だと思いますが、設定を詰めようと思えば詰めることはできます。
また、メインパネルの話ではないですが、音色を大きく変えるという点でライブラリの切り替えも重要です。右上の手のマークからピックと指弾きを切り替えることができます。指弾きの方がより温かみがある感じです。
Strummerパネル
ここからはいよいよ具体的なフレーズやパターンの打ち込み方です。キースイッチを意識せずに打ち込む方法を見ていきましょう。
Strummerパネルでは名前の通りコードストロークのパターンを作成することができます。

全体的なパラメータ調整
まず左の部分で、ストロークタイムやボリュームなど全体的なパラメータを調節することができます。ここについてはあまり詳しくは解説しません。曲やストロークパターンに応じて調節すると良いと思います。
ストロークのパターンの構築
演奏させたいコードは真ん中のスロットに登録します。コードネームを選ぶだけで勝手に減の押さえ方が設定されます。ただ、ストロークの途中でコートチェンジする場合などは後に紹介するようにDAWに貼り付けてから設定する方が楽かもしれません。
ストロークパターンを作るのは簡単で、右側のシーケンサーにアップ/ダウンストローク、ミュート、単音弾きなどの奏法アイコンをクリックで配置していくだけです。

これだけで複雑なカッティングやアルペジオを組み合わせたリアルなパターンが完成します。
ノートを上下にドラッグすることでベロシティが変わります。ベロシティに応じてノートの色が変わるので視覚的に分かりやすいです。
このようにキースイッチを意識せずに作成したストロークパターンはドラッグ&ドロップでMIDIデータとして貼り付けることができます。これによって細かいカスタマイズをDAW上で行うことができます。

C1からB2のノートがスロットの各コードに対応するので貼り付けてからストロークの途中でコードチェンジする場合は1つのノートで指定することができます。ここはキースイッチっぽいことを意識する必要があるかもしれません。

以上、あくまで一例ではありますが、ストロークパターンの構築方法を解説しました。ほぼキースイッチを意識せずに済むことがお分かりいただけたと思います。
Rifferパネル
Rifferパネルではリフ(フレーズ)を作成することができます。

このパネルはギターのTAB譜とピアノロールを融合させたようなインターフェースになっています。縦軸がギターの各弦に対応しており、どの弦のどのフレットをどのタイミングで弾くかを視覚的に指定することができます。
これにより、例えば同じCの音でも5弦3フレットを弾くのか、6弦8フレットを弾くのかという細かいニュアンスを直感的にコントロールすることができます。
また、打ち込んだノート1つ1つに対して
- アーティキュレーション(ハンマリング、プルオフ、スライド、パームミュートなど)
- ベロシティ
を細かく指定することもできます。

また、コードを弾きたいときは一番の下のStrレーンで、ノイズなどのパーカッシブな表現は下から二番目のFXレーンで打ち込めるのでRifferパネルだけで複雑なフレーズの打ち込みを完結させることができます。
Rifferパネルで作成したフレーズももちろんMIDIとしてドラッグ&ドロップで貼り付けられるので、DAW上で編集したい人も安心です。
バージョン4の進化
特にRifferパネルがバージョン4でかなり進化しました。具体的には以下のような点です。
- コードの指定と「ストラムノート」
- ピアノロールとギタータブのデュアルビュー
- MIDI CCエディタ
これまで以上に視覚的な分かりやすさが向上した印象です。以下では簡単に解説します。
コードの指定と「ストラムノート」
下の図のようにStrumツールを選択するとストラムノートというコード全体が一体となったノートを打ち込むことができます。
デュアルビュー
バージョン4以前はここまでで説明した通り、ギターのタブ譜のような形式でした。そこで、今回はピアノロールのようなビューが追加されました。これによってギターの構造に詳しくない人でも直感的に打ち込むことができるようになっています。
MIDI CC
MIDI CCでベロシティやピッチベンド、ビブラートなど様々な表現をエディタで直感的に編集することができるようになりました。DAWのエディタと似ていて馴染みがあるので、使いやすいです。
特にピッチベンドやビブラートなどはリアルなギターの表現に欠かせないので、それが内蔵エディタで編集できるようになったのは素晴らしいですね。

このようにバージョン4ではこれまで以上に直感的な打ち込みが可能になりました。
その他
打ち込みについてはここまでで解説した通りですが、Ample Guitarにはまだまだ機能があります。以下では簡単に解説します。
アンプとエフェクト
AmpパネルとFXパネルでは内蔵のアンプシミュレーターとエフェクトで音作りをすることができます。メロウな音だけでなく大きく歪んだ音も作ることができるので、自分好みに作り込んでみましょう。
Tabパネル
この記事では詳しく解説しませんでしたが、Tab譜のファイルを読み込んで再生できるTabパネルも用意されています。

気に入った点
- 結局、音が一番好き
色々な機能がありますが、一番の魅力はやはりそのサウンドです。立ち上げてすぐに感じた、あの甘くてチルなセミアコの空気感は、他の音源ではなかなか得られません。音源として、まず音が良いというのは何よりも代えがたいメリットだと感じます。
- キースイッチを意識せずにパターンを作れる手軽さ
StrummerパネルとRifferパネルのおかげで、これまで敷居の高かったギターの打ち込みが驚くほど直感的になりました。「この奏法はどのノートだっけ?」とマニュアルとにらめっこする必要がなく、作業に集中できるのは本当に快適です。
- ギターの知識がなくてもそれっぽくなる
コードを打ち込むと自動で適切な押さえ方(ボイシング)になったり、普通に演奏しているだけで勝手にハンマリング・オンやプリング・オフになったりするなど、細かい部分を音源側がサポートしてくれます。 これにより、ギターの専門知識がなくても、かなり「それっぽい」リアルなフレーズに仕上がるのが嬉しいポイントです。
微妙だった点
- 操作に慣れるまでは少し戸惑うかも
非常に高機能な反面、最初は少し戸惑う部分もありました。特にボタンにカーソルを合わせた際の説明が英語なので、慣れるまでは少し時間がかかるかもしれません。
- ショートカット
これは少しマニアックな点ですが、Rifferパネルなどでのショートカットキーの割り当てが、個人的には少し使いにくく感じました。もしこれをカスタマイズできれば、さらに効率が上がるのに…と感じます。
※バージョン4である程度改善されている印象です。Rifferパネルでのショートカットキーはかなり使いやすくなりました。
- リアルさを突き詰めると、やはりギターの知識は必要
打ち込む作業自体は非常に楽ですが、「どんなフレーズを弾けばギターらしく聴こえるか」という部分は、当然ながら自分で考える必要があります。この音源はあくまで素晴らしい演奏をしてくれるギタリスト。どんな演奏をさせるかというディレクションは、自分自身で行う必要があります。
こんな人におすすめ
最後にここまでのレビューをふまえてAmple Guitar SHおよびAmple Guitarシリーズがどのような人におすすめかをまとめます。
- キースイッチなしで直感的にギターを打ち込みたい人
奏法の切り替えをキースイッチに頼る必要がほとんどないため、「お勉強」感がありません。直感的なパネル操作で、ストレスなくコードストロークからリフまでを打ち込むことができます。
バージョン4の直感性がさらに向上したと感じます。
- 甘くメロウなセミアコのサウンドが好きな人
SHに絞って言うと実際に音を聞いていただいたように、非常におしゃれでメロウな音を出すことができます。Lo-fiヒップホップなどチルな雰囲気を求めるジャンルを作りたい人にはぴったりです。
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まとめ
今回はAmple SoundのAmple Guitar SHをレビューしました。AIのように自動生成とはいきませんが、自分の中にあるフレーズやパターンを直感的に、かつ高いレベルで表現することができる素晴らしい音源だと感じました。何と言っても雰囲気のある音色にビビっときた人は満足できると思います。
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